1.はじめにお伝えしたいこと

「パッシブデザイン」と「アクティブデザイン」

パッシブとは「受動的な」という意味です。アクティブは反対語で「能動的な」という意味です。建築でのアクティブデザインとは、電気やガスなどのエネルギーを利用して住空間を快適に過ごせるような注文住宅づくりを指します。対して、パッシブデザインは自然エネルギーを利用する家づくりで、立地条件により全く異なりますが、そこでの自然環境を知り、自然エネルギーと共に過ごせるよう建物に様々な工夫を施します。地球の温暖化による酷暑続きの現代ではアクティブデザインは必要不可欠ですが、第一にパッシブデザインを考え、それでも足りない部分をアクティブデザインで補うという考えが私たちの注文住宅づくりです。

今の建築基準法をクリアすれば「夏涼しく冬暖かい家」になるのでしょうか?

冬暖かく夏涼しいパッシブデザインの住宅

夏に家の中が暑いのは、室内に外から熱が入ってきてその熱がこもるからです。そこに涼しい風を通せば、熱も外へ逃げ身体も家も涼しく感じます。

冬に家の中が寒いのは、室内の熱が外に逃げていくからです。晴れた日には家の中に日射を入れて逃げないようにすると暖かく感じます。

昼間なのに暗く感じるのは窓などの採光の設計の問題です。

これは昔の家に限らず、平成や令和に建築した注文住宅でも、夏暑い、冬寒い、昼間でも暗い、風通しが悪いという現象は多く起きています。

近年では断熱性能が改善されて、家の内部と外部で熱が逃げていくという点は良くなりつつありますが、全ての建築物が省エネ・快適という点で満足できる住まいになっているかといわれると全体としてはまだまだ道半ばです。

省エネ・快適な家づくりには何が大切なのか

では、省エネや快適な注文住宅づくりに大切なものは一体何なのでしょう。私たちは立地エリア・周辺の環境・条件に基づく完全フリーで考えられた設計と考えます。

今ほどエアコンが普及していない時代は、日本の家は、四季や自然とうまく共生する家でした。

しかし、現在は膨大なエネルギーを消費する設備に頼って暖房・冷房に頼る暮らしが多くなっています。

アースティックのパッシブデザインは四季を通じて「良質で心地よい暮らし」を目指す設計手法であり、建物そのものが自然エネルギーを利用して快適を作り出すことによりエアコン等に頼ることが少なくなるため光熱費も減ります。

2.パッシブデザインの3つのメリット

快適な住まいになる

「冬暖かく夏涼しい、風が通って明るい家」

快適な家になれば、四季を通して我慢やストレスを軽減して過ごせるようになります。また、災害時の停電中には非常に有効的で注目されています。

健康な住まいになる

室内温度は健康に大きな影響を与えるといわれています。

日本では宅内の温度差に起因する事故(ヒートショック等)で年間1万人以上の人が亡くなっており、アレルギーなどもまた室内の温熱環境が原因とされています。夏には、家の中にいながら熱中症で命を落とす人が急増しています。

アースティックのパッシブデザインは「冬暖かく、夏涼しい」を実現することで、快適性が高いだけでなく、安全で健康な住まいを目指します。

光熱費を減らせる

アースティックのパッシブデザインは建物のあり方を工夫し、自然エネルギーを利用することで、冷暖房や照明の使用量を最小限にし光熱費を減らしていく注文住宅を目指します。

3.こころも体も健康に

健康的な注文住宅

ストレスから解放してほしい

家はやすらぎの場所であり私たちはそこで暮らす皆様には家族と幸せに過ごしてほしいと願っています。もちろん寒さや暑さにも左右されにくい場所であってほしいものです。アースティックのパッシブデザインでは最小限の冷暖房で四季を感じながら快適に過ごすことができ、寒さや暑さの我慢やストレスから解放されて身体的にも精神的にも健康な生活を送ることができる家を目指しています。

家の性能・設計デザインで健康になる?

近年、断熱性能を向上させることで様々な疾病が改善されるということが研究でわかってきました。

各種疾患の改善率と転居した住宅の断熱性能との関係

この研究は、約2万人に疾病に関するアンケートを取り、疾病があった人について転居後にその疾病がどう変化したかを調査したものです。

断熱グレードが3→4→5に進む(性能が高くなる)程、疾病改善レベルが高くなります。ちなみに現在の省エネルギー基準(義務ではない目標の基準です)は断熱グレード4です。

例えば気管支喘息は、断熱グレード3の家に転居したことで、60%弱の人が症状が出なくなったと回答し、断熱グレードが5になると改善の割合は70%にまで増加しています。

疾病原因は、冬のLDKや寝室の最低気温の影響が大きいのではないかと言われています。冬暖かい家にすることで具体的に健康になることが研究でわかってきました。

また、毎年夏になると家の中で熱中症になり救急搬送の件数が急増しています。パッシブデザインによる夏涼しい家にすることでこのような問題の解決の一端を担うことができればと思っています。

交通死亡事故よりも多いのは…

交通事故などは報道されますが、実は、家が原因で亡くなっている人がたくさんいます。このうち入浴中に交通事故よりも多い人が命を落としているというデータがあることをご存じでしょうか。

この原因の多くは冬場のヒートショックと呼ばれるもので、暖かい部屋→寒い脱衣室:血圧上昇→寒い浴室:さらに血圧上昇→湯船に入る:血圧が急激に低下という状況によって、心臓麻痺や脳梗塞になってしまいます。特に高齢者が多いといわれています。問題は家の中の温度差にあります。温度差が小さくなれば血圧の変化も小さくなり、ヒートショックはかなり防ぐことができます。パッシブデザインでも断熱は基本かつ重要です。断熱性能を高めることで宅内の温度差を小さくします。きちんとした浴室の断熱でヒートショックを防ぎ、豊かな入浴タイムをお届けします。

4.パッシブデザインのポイント

高断熱・高気密住宅+α=パッシブデザイン住宅

近年、欧米諸国の影響で、国も新築住宅の断熱性能を高める施策を積極的に取り改善を推進していくようになりました。そうすることで高断熱・高気密住宅をアピールする住宅会社も増えてきました。しかし、断熱性能が高いだけでは快適・健康な住宅にはなりません。例えば、断熱性能を高めることによって、冬の室内環境は大きく向上しますが、断熱性能を上げれば上げるほど夏暑くなるという、矛盾した現象が現れます。また、建物全体の断熱性能を上げるには窓は少ない方が断然有利なのですが、その数値にこだわると今度は風通しや明るさが悪くなってしまいます。

パッシブデザインは「言ったもん勝ち」?

パッシブデザインには明確な数値によるグレード等はありませんし、これをしたらからパッシブデザインと呼んでいいという決まりもありません。なので、作り手が『うちはパッシブデザイン住宅です』と宣言すればそれはもうパッシブデザインの注文住宅になります。

アースティックでは、現地シミュレーションからはじまりそれぞれを数値化して目に見える形にすることで精度の高いパッシブデザインの注文住宅を提供するよう心がけています。

「冬暖かく夏涼しい、風が通って明るい家」を、建築する周辺環境、立地条件の中で最大限に実現させようとする場合、そこに関わる要素は多岐にわたります。

例えば敷地の周りにある建物。この状況によって夏至や冬至の日当たりや明るさは千差万別です。また、将来周辺の建物が変わる可能性も十分考えられます。

また、地域の気象条件(気温、日射量、風向きなど)によっても、ご提案する設計は全然違います。

こうした外部の条件と建物の断熱性能や窓の配置などの組み合わせによって、その家がどれくらい「冬暖かく夏涼しい、風が通って明るい家」かが決まります。

アースティックでは、シミュレーションツールを用い、その結果を検証しながらプランを進めていき、データ、数値をもって、お客様にご提案します。

結果と検証

パッシブデザインは、お客様に快適に暮らしてもらえる為の設計です。そこで、お客様宅に計測器を設置し、結果(温度やエネルギー消費量)に関する調査についてのご協力をお願いすることもありますので、ご協力いただければ幸いです。

5.5つのデザイン要素

「冬暖かく夏涼しい、風が通って明るい家」を実現するためのポイント

1断熱

パッシブデザインの断熱

2日射遮蔽

パッシブデザインの日射遮蔽

3自然風利用

パッシブデザインの自然風利用

4昼光利用

パッシブデザインの昼光利用

5日射熱利用暖房

パッシブデザインの日射熱利用暖房

6.省エネルギー

省エネ

暖房、冷房、照明エネルギーを減らす

パッシブデザインは建物そのものの工夫によって「冬暖かく夏涼しい、風が通って明るい家」をつくり出すので、暖房、冷房、照明に必要なエネルギー消費量を減らすことができます。

家庭内でエネルギーが消費されるのは暖房、冷房、給湯、照明、換気、家電、コンロの7つの用途です。

パッシブデザインは「冬暖かく夏涼しい、風が通って明るい家」を実現させながら、7つの用途のうちの3つのエネルギー消費量を減らすことができます。

ゼロエネルギー住宅の是非

国は家庭部門の省エネルギー推進のために、ゼロエネルギー住宅の大幅な普及を計画しており、2020年にはZEH(ゼロエネルギーハウス)を新築住宅の50%に、2030年には「新築住宅の平均でZEH」を目指しています。

そのために、2016年度にはZEHの要件が定義され、補助金制度も充実してきました。ZEHの要件を満たすために必要なことを簡単に言えば、建物や設備の工夫によって一定にエネルギー消費量を減らしながら、太陽光発電を設置して、そのエネルギー消費量を相殺させれば良いということです。

新築住宅を建てる方にとってZEHにするメリットは「補助金がもらえる(可能性がある)」「光熱費が安くなる」ということです。

ZEHの要件のひとつに「平均的な住宅よりも断熱性能を一定に上げること」という内容もあるので、「ある程度断熱性能が高い家が得られる」というのも加えてもよいかも知れません。

ここでの問題は「ZEHの家」は「冬暖かく夏涼しい、風が通って明るい家」とは違うというところです。

アースティックもZEHの家には前向きですが、補助金のためにZEHの家をつくろうとは思っていません。

私たちが目指すのはパッシブデザインをベースにしたZEHの家をつくるということです。

適切なパッシブZEHの家には「冬暖かく夏涼しい、風が通って明るい家」に最も大切なメリットが得られ、補助金獲得、光熱費の大幅削減ができ、省エネルギーという社会貢献もできます。

7.パッシブデザインにもデメリットはあるの?

ローコスト住宅の方が建築費は安い

壁・窓・床・屋根の断熱性・気密性を高く設計するので、ローコスト住宅に比べると建築費は少し高くなります。その分、建築後の光熱費や中には医療費の削減につながるご家庭もあると思いますのでトータルでしっかり検討することが必要です。建築時の費用だけで考えず、家づくりも生涯コストで考えていただければと思います。

大幅な変更が利きにくい

設計の段階から周辺状況等を元にその場所・環境での有効な自然エネルギーの利用を考えて緻密な計算を行っていくため、設計の大幅な変更は自然エネルギーを最大限に使えなくなっていく可能性があります。例えば、窓のサイズや位置、庇の長さ、建物の形などの変更は慎重に行う必要が出てきます。